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【トリックの仕掛け方】綾辻行人 【叙述トリックを成功させる方法】折原一 【手段としての叙述トリック ― 人物属性論】我孫子武丸 【どんでん返し ― いかに読者を誤導するか】逢坂剛 【ストーリーを面白くするコツ】東直己 【比喩は劇薬】小池真理子 ?いまだかつてない恐怖と謎が読者を魅了する。名手・綾辻行人の新たな代表作となった長編本格ホラー。事情を知った恒一はそれに逆らわず、鳴とだけ過ごすようになりますが、それでも死は止まらず、一刻も早い対処が求められました。綾辻行人さんといえば『十角館の殺人』だと勝手に思い込んでいましたが、本書を読んでその浅はかな認識は簡単にひっくり返されました。以下は新本格ミステリ三十周年を記念したインタビューで、本書にも触れています。恒一はクラスに蔓延する不自然な空気の理由を知ろうと調べていると、二十六年前の事件にたどり着きます。クラスメイト全員は、鳴がまるでその場にいないかのように振舞い、誰もその行いを注意しようともしません。下巻に入るとますます止めるタイミングを失い、物語の生み出す圧倒的な世界観に飲み込まれていきます。恒一の母・理津子もこのミサキと同級生で、この時、そしてそれ以降に何があったのか。死者のように冷たくないことから、恒一は死者ではないと認識されています。上巻はいわば問題提起のパートですが、謎が謎を呼び、本当のことが知りたいとページをめくる手が止まりません。鳴は幼い頃の事故で左目を失い、義眼をつけていて、それを隠すために眼帯をつけていること。本書には外伝にあたる『Another エピソードS』もありますので、本書の世界観に惹かれたという方はぜひ挑戦してみてください。こうして恒一や鳴、そしてクラスの関係者は疑心暗鬼になりながら増えた死者を探すことにしました。主人公の榊原恒一は父親の一年に及ぶ海外の仕事の影響、そして自身の病気療養のために東京を離れ、夜見山にある祖父母の家に預けられることになりました。物足りないと感じたのは、僕が本書にミステリではなくホラーとしての面白さを望んだからかもしれません。最後に批判的な意見を出してしまいましたが、広げた大風呂敷がきっちりとたたまれていましたので、その点においても本書は、これはこれで完成しているのだと思います。病院にお見舞いに来てくれた風見たちと同様、担任の先生や他のクラスメイトたちの間には不自然な緊張感が漂っていますが、恒一にはその理由が分かりませんでした。恒一は二人の様子を不思議がりますが、この時点でその意味は分かりません。無事に退院し、転校した中学に初めて登校した恒一ですが、初日から違和感を覚えます。これから同じ中学のクラスメイトとなるということで、代表してクラス委員の風見と桜木がお見舞いに来てくれました。二十六年前、恒一の学校でミサキという名前の人物が亡くなっていました。そしてある日から、恒一は鳴同様、『いないもの』として扱われるようになります。恒一のこの違和感は当たっていて、いじめという認識が誤りであることが後に分かります。しかし、ホラーとして見た場合に、その恐怖が後半にかけて薄くなってしまったのがちょっと残念でした。もちろん、説明がつかない現象や能力もあるのでリアリティに欠ける部分はあります。それが鳴であり、それでも死が止まらないことから効果を高めるために恒一も『いないもの』として扱われるようになったのでした。作風からも若い読者が増えて、綾辻さんにとっても大きなターニングポイントになったのではないかと思います。また恒一は病院内で、転校予定の中学の制服に身を包んだ少女に出会います。恒一が鳴と病院で会ったあの日、病院で『藤岡未咲』という人物が亡くなり、鳴はその未咲に届け物をしていたこと。しかし、それを前提・条件としてしっかり提示して、その上で納得のいく答えを出してくれるので、本書はフェアなミステリとしても秀逸だと思います。さらに鳴の机だけがひどく古びていて、ここから連想されるのはいじめですが、それにしてもやりすぎというか、徹底されすぎています。人形は鳴の母親が作っていて、その中には鳴にそっくりな人形があること。単なるホラーで終わらないところに、綾辻さんがこれまで培ってきたミステリに関する知識、センスが活かされています。恒一たちのクラスで謎の現象が始まっていることは明らかで、つまり知らない死者が一人増えていることになります。その範囲はクラス関係者ということで、生徒やその家族、先生にまで及びます。恒一は夜見山にきてすぐ、二度目となる『自然気胸』という肺がパンクしてしまう病気にかかり、入院します。最初はちょっと不気味な学園ものくらいに考えていましたが、とんでもありません。知れば知るほど鳴の現実味が薄れ、恒一は、本当に鳴は存在するのか？と疑心暗鬼になります。デビュー二十二年目で新たな代表作が生まれたのですから、これから綾辻さんの作品を読み始める人のいい試金石になるのではないでしょうか。最後に物語の中核となる『死者は誰か？』が明かされ、その説明も納得のいく素晴らしい仕掛けでした。しかし、記憶や記録は辻褄が合うように改ざんされてしまうため、増えた人物を特定することはできません。謎が謎を呼び、与えられた情報から推理するミステリ要素もあれば、それ以上に理解を越えた恐怖をリアルに描くホラー要素もあり、綾辻さんを語る上で外せない作品であることは間違いありません。この一連の出来事は呪いや災厄として表現され、今に至るまで語り継がれてきました。メイの目的地は地下二階ということでしたが、そこには倉庫や霊安室しかなく、病院関係者でもない少女が向かう用事などないはず。それくらい勢いがあるし、謎を解明する中でのスリルがたまりませんでした。奇妙な「二人だけの孤独と自由」を過ごす中で、恒一と鳴、二人の距離は徐々に縮まっていく。第二図書室の司書・千曳の協力を得つつ、“現象”の謎を探りはじめるが、核心に迫ることができないままに残酷な“死”の連鎖はつづく…。夏休みに入ったある日、発見させる一本の古いカセットテープ。そこに記録されていた恐ろしき事実とは!
以下は新本格ミステリ三十周年を記念したインタビューで、本書にも触れています。 「新本格ミステリ30周年」インタビュー 綾辻行人の「館」 この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。 以下は新本格ミステリ三十周年を記念したインタビューで、本書にも触れています。 「新本格ミステリ30周年」インタビュー 綾辻行人の「館」 この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。 今回はインタビューの方のレビューを行きます。 ・・・ ホラーとミステリの交わる場所で～小野不由美x綾辻行人 インタビュー 写真ページを入れて8ページのロングインタビュー。 二人のホラー観とか、出会いとかから入るんですが、
綾辻行人（あやつじ・ゆきと）さん 1960年、京都府生まれ。京都大学教育学部卒業。同大学院修了。京大の推理小説研究会に所属し、在学中の87年に『十角館の殺人』でデビュー。 『水車館の殺人』『迷路館の殺人』と続く「館」シリーズを中心に、現代本格ミステリを牽引する。 ※本インタビューは2017年3月15日刊「in☆pocket」に掲載されたものを再録したものです。 綾辻行人氏 .